山田永太郎さんインタビュー 夢は観光農園、若い農業移住者を増やしたい

 

小学生の頃から園芸好き、マニアックな植物を育てることが趣味だった山田さん。農業を究めるため、都立園芸高等学校を卒業した後、全寮制の八ヶ岳中央農業実践大学校に入ります。その後、富山、群馬、鹿児島など各地で、稲作から果樹まで農業の修行をしました。

 

高校生の頃から、何度か遊びに来ていた鋸南町。温暖な地域で農業をしたいと考え、各地を検討した上で移住を決めました。家賃5,000円という破格の家を紹介してもらい、畑ではトウモロコシやブロッコリーなどを栽培して農業を営んでいます。ひじき、こんぶという名前のヤギは子供も生まれて、家族が増えました。

 

いずれは観光農園としてオープンする夢を抱いています。山田さんの言葉は穏やかでしたが、筋金入りの農家の力強さがありました。

 

 

山田 永太郎(やまだ えいたろう)さん

平成2(1990)年3 月生まれ。

 

出身は東京都新宿区、高田馬場。父は運送会社に勤務し、毎週、鋸南町に遊びに来ることを楽しみにしている。弟は、鉄道関連の会社員として働く。「農業は専業」をポリシーとして掲げ、農業の在り方を真剣に模索している。

 

 

 

鋸南町の暮らしと、日本各地で農業修行をした日々

ひじき、こんぶという名前のヤギを飼っています。先日、2匹の子供が生まれました。子ヤギは檻から脱走しようとするので、捕まえるのが大変です。けれども、生まれたばかりの子ヤギをぼーっと眺めていると、思わず畑仕事を忘れてしまいます。

 

住まいは8畳の部屋3つ、6畳の部屋2つ、風呂と台所。家賃は月5,000円です。不動産屋の方に相談して決めようとしていた家がありましたが、人づてに「もっといい物件があった」という知らせを聞いて訪れて、ここに決めました。

 

畑の広さは1町3反、およそ130アール(1,300平方メートル)です。夏場にはトウモロコシ、ズッキーニ、パッションフルーツ、冬場にはブロッコリーやサニーレタスなどを栽培しています。

 

この私の農場を、ヤマダパラダイスファームと名付けています。鋸南町に移住して、3年目を迎えました。

 

実は鋸南町は高校生の頃から知っていました。久里浜からフェリーに乗って、何度か遊びに来ていたからです。そのとき、道の駅きょなんの岡村妙子さんに出会い、色々話をしました。岡村さんの人柄に感銘を受け、いつかこの地で農業ができたらいいなと考えました。

 

けれども、「いきなり鋸南に移住しないで、日本各地で農業の修行をしよう」と思い立ちました。

 

自分なりに決めたルールは、「ひとつの地域に1年以上いない」「1度行った場所には再度行かない」、なぜなら甘えやだらけにつながると思ったから。このルールに従って、富山で稲作、群馬では養蜂、コンニャクとアスパラガスの栽培、鹿児島の徳之島でパイナップル収穫、沖永良部島で菊の花切りなどをやりました。

 

各地を見て回った結果、最終的に温暖な気候が魅力の南房総の鋸南町を選びました。

 

 

 

『趣味の園芸』が愛読書だった、マニアックな子供時代

幼少の頃を振り返ると、おばあちゃん子でしたね。祖母は花が好きでした。植物好きは祖母の影響があるかもしれません。

 

植物に熱中した決定的なきっかけは『小学1年生』という雑誌。ポケモンに登場するキャラクター、フシギダネを育てようという応募者全員プレゼントがありました。簡単な植物栽培キットだったわけですが、うまく育たなくて悔しくて。今考えると、小さな植木鉢や粗悪な土では植物が成長しないことが当たり前ですが。

 

小学4年生から『趣味の園芸』という専門誌を読み漁り、マンションのベランダで、栽培が難しい花を育てるマニアックな子供でした。植物は見ることも、育てることも好きです。

 

中学校では園芸部の部長を務めました。ランの一種であるエビネの展示会に行ったり、園芸店でマニアックな質問をして店員を困らせたりしていました。園芸にのめり込んで、都立園芸高等学校に入学。やった!これで園芸好きの仲間とディープな話ができるぞと思ったら、あまりそういう生徒がいなくて、がっかり。

 

花から野菜に興味の対象が変わり、全寮制の八ヶ岳中央農業実践大学校に進学して、2年間、本格的に農業を学びました。農業の世界では、厳しいことで有名な学校です。冬はマイナス20度という極寒の地で鍛えられました。

 

 

夢は観光農園、変わりつつある鋸南町の可能性

農作物の売り方は、直売がメインです。その他、農業生産法人サンポ―ファームという卸売会社に届けています。その会社の親会社はカット野菜が主力で、外食産業に野菜を提供している企業です。業務用のため、コンテナにそのまま農作物を入れて、トラックで運んでいます。

 

道の駅 保田小学校で直売できるようになり、販路も大きく変わりました。新鮮な野菜は、地元にも観光客の方にも大変喜ばれています。

 

地元の農業を活性化するには、農業体験を増やすことがポイントでは。道の駅 保田小学校には、宿泊施設があります。夏休みの期間に東京の農業高校から生徒を招いて、うちで農業を体験させるアイデアを持っています。1,000人にひとりでも農業をやりたい若手が出てくれたなら、素晴らしいじゃないですか。

 

将来の夢は、ヤマダパラダイスファームを「観光農園」にして、本当に「顔の見える農園」をめざしたい。顔が見えるというと、スーパーのPOPに農家の方の写真を貼ることを思い浮かべますよね。しかし、僕は自分の作った野菜を喜んでくれるみなさんと実際に会って、コミュニケーションを大切にしたいと考えています。

 

鋸南町を訪れた若い人たちが農業の楽しさを知り、自分のように農業を始めるきっかけになると最高です。いっしょに観光農園を実現する仲間を求めています。農業で移住を考えている人は一度、鋸南町を訪れてみてはいかがですか。農業について語り合いましょう。